あるねぶのFamily Medicine留学メモ

留学で見たものをまとめました。ただのメモなので、読みにくく申し訳ありません。

Family Medicine Clinic 受診患者統計(非公式)

実は、2週間半の間にFamily Medicine Clinicで見た患者さん(計80人)に関して、簡単に統計を取っていました。
せっかくなのでこちらも公開したいと思います。
ただ、あくまで全ての患者さんを見たわけではない点、複数の指導医にshadowingしていた合計である点、時間帯によっては診察室におらず見ていない患者さんがいる点など、限界は多々あるかと思いますので、その点はご了承ください。
 
・年齢別

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「青少年」は就学期(6-18歳頃)を想定した年齢区分です。

意外に高齢者(65歳以上)が少ない点、小児がかなり多い点に驚きました。

 

・性別

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想定していた以上に女性が多かったです。

もしかしたらメインでshadowingしていた指導医が女性だったので、患者さんが選んで割り当てられていたのかもしれませんが…

 

・疾患カテゴリー別

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当然複数の問題を抱えた患者さんはたくさんいらっしゃいましたが、「その状態になった根本の原因は何か」「今回の受診で最も時間が割かれていた内容は何か」に注目して分類しました。
感染症/アレルギーに関しては独立したカテゴリーを作るか迷いましたが、最も症状が強く出ている部位のカテゴリーに入れています。
一番多かったのは筋骨格系で、これがFamily MedicineがOSCEでmuscloskeltalを担当している事や、同センター内にSports Medicineの医局を設け運動療法に注力している所以だなと感じました。
また、避妊や予防接種に関する受診も多く、それぞれ重要な家庭医の仕事の一翼になっていると感じました。
反面で意外にも精神疾患がメインの患者さんは少なかったです(併存している人は多かったですが)。

第三週水曜(4月17日)

・医局と診察室の配置
今日は昼にスタッフ全員によるミーテイングの時間があり医局に誰もいなくなったので、その間に診療所内をひっそり探検した。
医局はRED BUD/BLUE SKY/GREEN COUNTRYの3つのブースに分かれている。
数えてみたら、診察室はGREENに16室、REDとBLUEの間にはパーテーションが無く合わせて27室、共用の処置室が6室あった。
待合から中に入るとこのような視界で、ナースに何れかの診察室に案内される。
右に見えているのが医局スペースでこの前を通ることになる。

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また待合の外のスペースに、子供のワクチン接種用の部屋と、SOONER CARE(オクラホマで比較的よく見かける保険。オクラホマ州=Sooner Stateなので)に関する相談室が備え付けられている。
 
・医局の机の配置
医局の机配置はレジデントより上の常勤スタッフ以外は定まっていない様子。
電子カルテが長机に並べて置いてありパーテーションはなく、基本医者は1つ電子カルテ端末を間に空けて座る。
これは、この空いている電子カルテ端末のところに、医学生が座り担当の指導医からの直接の指導を受けるためである。

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・米国の高血圧診療
1stはACE阻害(リシノプリル)かサイアザイド(クロルタリドン/日本では使用不可)であり、その利用は半々くらい。
心不全など心機能に問題がある場合はリシノプリルが優先される。
2ndはCaブロッカー(アムロジピン)。
3rdはβブロッカー(メトプロロール、カルベジロール)
これらでもうまくいかない場合は腎臓内科医や内分泌医による精査も考慮し、クロニジン(α2アゴニスト)も試される。
 
アムロジピンによる足背浮腫
Ca拮抗薬は末梢血管拡張作用と心収縮抑制作用を持つが、特に前者の末梢血管拡張に伴う足背浮腫が起こるリスクがあり、患者が心不全と思って病院を受診することがある。事前にそのようなことが起こりうることを伝えておくことが大事。
 
・financeに関するレクチャー
用語が難しくて10%も理解できなかったが、医学生に対し、医者の収入や資産運用、税制、株などに対するレクチャーが行われていた。
Dow Jones、Gross/Net pay、Pre/Post-Taxなどの単語が飛び交っていた。
医学生もいつもの疾患別のレクチャー以上に興味をもって聞き、たくさん質問していた。
聞いたところによると、OU-TUでは家庭医療のローテーションで回ってきた全ての3年生とPAにfinanceのレクチャーをしている。
このような話題を医学生およびレジデントの教育プログラムの中で扱うことは、米国では一般的なようだ。
 
・『Fracture Management for Primary Care』
プライマリケア領域で必要とされる骨折のマネジメントやレントゲン読影、専門医への紹介のタイミングなどについてまとめた良書。
骨折苦手なので、日本語訳が欲しい。頑張って原著読むか…
 
・Hillcrest Grand Round
週一回水曜日に、隣接するHillcrest Hospitalの講義室で1時間開催されている。
ラウンドという名前だが回診ではない。
様々なテーマに関するランチョンセミナーのような形だが、製薬会社からの資金ではなく病院の資金で開催されている。
ご飯はまさかのバイキング形式でおいしい。
対象は医学生~レジデントや上級医、ナースも参加可能。
今月のテーマは「Primary Care Approach to CKD」「Anticoagulation」「Rectal Cancer Treatment」(1回中止になった)
なお、アメリカにおいても製薬会社の絡む広告込みの勉強会は行われているらしいが、Family Medicine Centerでは製薬会社が絡む勉強会の開催を一切禁じている。

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アメリカの予防医学とACEs
今日の友人との会話による。
彼は「アメリカの医療システムは病気の人に対しては(だから海外からもわざわざ受診のためにやってくる人がいる)優れているが、健康な人に対してはイマイチ」と言っていた。即ち、アメリカにあっても健康な時に受診し新たな疾患の発生を防ぐという予防医学の概念は、特に高齢の患者であるほど、未だ浸透していない。
また彼は特に精神科疾患の診療に関して疑問を抱いている様子であった。というのも、精神疾患が起きてERか家庭医を受診した後でないと精神科に係れないという仕組みが理不尽だと感じているらしい。仮に両親とも統合失調症で兄弟も統合失調症だ、という人がいたとしても、発症しERか家庭医がfirst touchした後でないと精神科医は関与できないのである。
またACE(adverse childhood experience)の話もこれに関して盛り上がった。
日本語では「小児逆行体験」と訳されており、多くの健康問題に関わるとされ近年米国では研究が盛んである。
まだ実臨床でこの概念が十分応用されるまでは至っていないが、今後の進展に期待。
 
・家庭医療の競争率
各専門科の人数が制限されており、USMLEの点数で診療科の選択が左右されるのがアメリカの専門医制度だが、家庭医療科の競争率はかなり低いらしい(倍率が一番低いこともあるという)
 
・患者の引っ越し
新しい地域にうつる場合は、患者が新たなPCP(Primary Care Physician)を選ぶ。
前のPCPが次のPCPを指定することはできない。
最後の診察の時に患者に対して診療情報提供書的なものを渡す感じ。
 
片頭痛の薬剤に関するあれこれ
<ピル>
ピルは片頭痛を増悪させるため、片頭痛の患者の避妊法では経口ピルではなく経皮デバイス等別の手段が推奨される。
<トピラマート>
知らなかったのだが、トピラマートは片頭痛発作を抑える効果があるらしい。
ただ前兆の発生を抑えるだけで発作の発生頻度は変わらないという話も?
<Treximet (スマトリプタン・ナプロキセンNa)>
併用すると片頭痛への効力が高まるとされるため発売されている合剤だが、なぜか異常に薬価が高い(9錠で2万ドル以上)。
別々に処方して同時に飲んでもらった方がよっぽど安い。合計20ドルもしない。
 
・合剤の高価販売
Treximetの件が気になって調べてみたところ、安価な2つの薬を合剤にして「新たな」薬として高価に販売する、という手法がよくあるみたい。代表的なものとして、Duexix(イブプロフェン/ファモチジン)、Treximet、Acanya(クリンダマイシン/過酸化ベンゾイル軟膏)、Ziana(クリンダマイシン/トレチノイン軟膏)、Qsymia(フェンテルミン/トピラマート) など。
調べたところによると、避妊薬、減量薬、痛み止め、抗菌薬 などに特にこういったケースが多いようである。
 
・Oklahoma PMP aware
PMP: precription monitoring program
コデインなど処方に制限のある薬が、それぞれの患者に誰がどれだけ処方したかを一元的に記録しているツールである。
オクラホマ州内の患者であれば、他院/他州で処方されたものも併せて参照することができる。
モルヒネ換算でどれだけ処方されているかが時系列で表示される。
 
・lead screaning
米国では、住環境の問題で400万人以上の子供が鉛に暴露されているとされ、小児期の血中濃度スクリーニングが推奨されている。
ただその見解がガイドラインによりバラバラ。
小児科学会: 1歳時と2歳時
家庭医療学会: 2歳時
予防医学学会 1歳時と2歳時に患者からの要求があれば

第三週火曜(4月16日)

・OSCE概要
アメリカのOSCEで、国家レベルで行われるものはUSMLE STEP2 CSである。
これは模擬患者さん一人当たり25分(診察15分記録10分)を12人分行う形式であり、休憩時間も込みで8時間のぶっ続けで行われる。
この形式に順じ、各大学内でも練習を兼ねてOSCEが行われるが、頻度などは大学により様々。
OU-TU School of Community Medicineでは素晴らしい設備のシミュレーションセンターがあるため、各科のローテーション中にほぼ必ず一度OSCEが行われる。(つまり1-2ヵ月に1度の頻度でOSCEがある計算になる)
基本は模擬患者さんを呼んで行うが、小児科の場合は実際の患者さんらしい。(Bedlamのような形で、診察を無料にする代わりに協力してもらえないか家族にお願いするとのこと)
どの科でも基本は25分を単位にして行われるが、その配分は内容により異なる。例えば精神科は25分全て問診、神経内科は25分全て問診+身体診察で記録なし、など。
 
・Simulation Center

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今日の予定はこんな感じで、Family medicineのOSCEは8:30から1時間半行われた。
ちなみに午後1時からは1年生の「SPBL」が入っている。
これは、Standalized Patient Based Learningの略で、腹痛や頭痛などの比較的典型的な症例に関して、模擬患者さんを複数人の学生で診察する形で学ぶものらしい。面白そう。
 
・Family medicineのOSCE概要
Family medicineのOSCEでは、「musclocskeltal」と「counseling」の2ステーションが行われる。
症例は毎回変わるが、分野の割り当ては同じ。
Family medicineがmuscloskeltalの担当になっていることが興味深かったが、これはOU-TUに整形外科が無く、またアメリカの整形外科はより手術に特化しているため、いわゆる整形内科的な領域の多くをFamily medicineが担っていることが背景にある。
 
・SP(Standalized Patient)
今日の模擬患者さんは4人。
日本のようなボランティア制ではなく職業として確立されており、しっかり給料が出る。
調べたところ、年収は平均4万ドルくらいらしい。
 
・OSCEの流れ
1ステーション当たり25分。
今回の学生参加者は6名、SPは2名ずつ×2ステーションの4人であるため、3サイクル行い各学生は2サイクルに参加、1サイクルは休憩という形。
診察室のドアの書類入れに症例の概要が伏せておいてある。
名前・年齢・性別・バイタルが記入されており、25分間ですべきことの指示が書いてある(この内容は日本のように「○○の身体所見を取れ」のような具体的なものではなく、診察内容は自分で考える必要がある)
25分の開始が告げられると、まずこの書類を裏返して確認するところから始まる。
 【課題の確認中の様子】

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読み終えれば、B5のメモ用紙1枚をもって各々のタイミングでノックして診察室に入る。
この時、診察室に入る前にメモ用紙に病歴や所見などの記入欄を作成しておくことは認められている。
 
診察室内では、10分経過、15分経過、23分経過時に自動音声によるアナウンスがある。
 
必要に応じて退室し、診察室の前に備え付けられた電子カルテ端末で記録を作成する。
 
・OSCEに関わる設備
各模擬診察室内および外には、CAE社によるLearning Space Instuityの端末が備え付けられている。
学生はこちらからログインして電子カルテ記録を作成できるし、実施スタッフ/見学者は診察室内の様子を確認できる。
電子カルテ記録は保存され、後から見返して先生からフィードバックを受けることも可能である。
 【Learning Space Instuity端末】

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診察室内にはカメラが2つずつ設置され、外部の端末から角度などを調整できる。
試験中の様子は全て録画され、診察した学生の氏名(青欄)、SPの氏名(緑欄)とともに保存される。
 
・OSCEの電子カルテについて
ステーションによってはカルテを記入する必要はないが、記入する場合制限時間は10分である。
電子カルテではSOAPの全ての記載を求められ、またAでは鑑別疾患およびその根拠の記載が必須である。
SOAP形式での記載やタイピングに慣れていないと10分でまとめるのはかなり大変。
 
・muscloskeltal
34歳女性の手首の痛み。
症例は毎回異なり、他には首の痛みや腰の痛みなど様々。
15分で主訴にフォーカスした問診と身体診察を行い、10分でカルテ記載。
直腸/骨盤/生殖器/乳房/角膜反射の診察を行ってはいけないとの指示あり。
 
・counseling
60歳男性で、家族からなんとなく息がしづらそうとの指摘があったため来院、という症例(His significant other thinks that he isn't breathing well)
今回は禁煙指導にもっていく流れが主だった様子だが、症例は毎回異なる。肥満、糖尿病、うつ、アルコール依存、高血圧コントロールなど様々。
15分で主訴にフォーカスした問診とカウンセリングを行い、一度退室した病室に戻り、10分間以内でSPからのフィードバックを受ける(もはや世間話と化していたことも笑)。
カウンセリングでは患者に診断を告げ、またもし未治療の場合に起こりうる合併症について情報提供する。
また適切な初期治療の提案を行う。この際特に、非薬物的な治療(生活習慣への助言など)はどうするか、二次予防はどうするか、フォローが必要かどうか、の観点に注意する。
なおこのステーションでは、身体診察を行ってはいけない。(これは診断が既知の患者さんに対しどのようにカウンセリングをするかという能力を測るためのものだからだ、との記載あり)

第三週月曜(4月15日)

・米国の格差
米国における経済的格差は、事前サンフランシスコ旅行でも実感するところではあったが、保険格差や健康意識の格差もあるのだろうなと感じることが実習をしていて蓄積してきた。
とくに健康意識格差については面白いと思っていて、BMI40とか50とかの肥満の患者さんがごろごろいる一方で、大抵のアメリカの町では公園などが十分すぎるほど整備されており、そこでジョギングやランニングに勤しむ人も少なくない。
確かどこかで一度肥満と貧困が関連すると聞いたことがあるような気がするが、、、
 
・レジデントのローテ
今日ローテ調整担当のスタッフさんのカレンダーを見る機会があった。
Family medicineのレジデントは、Family medicine center(外来)/pediastric/ICUを、2週を1コマとする単位で何単位かずつローテしている模様。またERでの勤務もやってそう。
 
・米国のOSCE
米国のOSCEは、国単位で行われるものは3年生の間に受験して受からないといけない。
ヒューストンやシカゴなどの開催地に、全米から医学生が集まる。
1回落ちれば留年というわけではないが、別の時期のやつを受けないといけないらしい(3回落ちると一周?)
医学生は患者20人を一人につき15分診察する。日本のような、外科手技やBLSなどの手技はなく、問診/身体診察/鑑別/検査オーダーのみ。
鑑別診断をあげない(診断を1つに決めきってしまう)ことや、患者さんに失礼なことをしない限りは落ちない。
性器出血や、がん告知など、さまざまな主訴の患者さんが来て、どういう人が来るかはその時になるまでわからない。
 
またこれに対応して、各大学内でも独自にOSCEを対策として行っている場合がある。
OU-TU School of Commuity Medicineの場合は、各科のローテーションの終了前に必ずOSCEが行われる。外科ですらも行われる(主訴: 右下腹部痛など)
 
・shingles
米国では、50歳時に帯状疱疹の予防接種が推奨されており、Medicare Wellness Questionにも接種有無を記入する欄があった(他はインフルエンザと肺炎球菌)
 
・障害者のメディケア
身体的・精神的問題がある場合、65歳以下でも自分で申請すればメディケアを受給できる場合がある。
65歳以下のメディケア受給者はそれほど多くないが、原因は身体/精神とも様々。
需給に際しては対象となるような疾患の一例みたいなのがあるらしいけど、探しても見つからなかった。
 
・聴診器で打腱
なんと、聴診器のダイアフラムの飛び出てるところを打腱器代わりに打診するという荒業を見た。そんなんあり?
 
運動療法の適応
例えば背部痛でも、筋骨格系に由来してそうな痛みは、割とすぐに「動いたらよくなるから!!!!」的なニュアンスで運動療法を勧めている印象がある。
ただ、基本的には直腸膀胱障害や下肢の麻痺の有無などの神経学的徴候を除外した上で推奨している。
また、そういった筋骨格系の背部痛はかなり高頻度で肥満に関連しているので、減量も兼ねた提言なのかもしれない。
 
・タルサと花粉
何でか知らないけど、タルサは全米でトップクラスに花粉が多い町らしい。(というかオクラホマが全般に多い)
今週末にかけてがが特にひどく、今日の統計見たけど、他の都市をぶっちぎってた。
seasonal allergyや、それに伴う後鼻漏や結膜炎やの患者さんが確かによく来る印象。
ただそれにしてもあまりに色んな症状に対してアレルギー性鼻炎と診断しすぎな気がした。

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・Allergic salute / nasal crease
おもにアレルギー鼻炎の際に鼻汁がひどい時、(半無意識的に)手を使って鼻を上向きに擦る行為のこと。
慢性的な鼻炎が続きこれを繰り返している場合、鼻の中央に線ができる。これは一時的な場合もあれば、特に成人患者においては萎縮性に瘢痕のようになる場合もあり、また高色素性のことも低色素性のこともある。
JAMAの1960年の論文が引っ掛かったけど、閲覧できず。 JAMA. 1960;174(9):1204-1206.

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・子供の年齢ごとの電子カルテフォーマット
子供には各年代ごと/性別ごとに電子カルテのフォーマットがあり、予防接種などで受診したときに合わせその内容を確認・記入するするようにしている。
たとえば11-14歳男児の場合は、運動や栄養、学校生活や心理状態等に関する質問がある。
"Drink alcohol?"や"Smoke?"などの質問があり驚いた。
また性に関する質問が多くある。"Wet dream?" "Have you started having sex?"など。
当然必要に応じて親を退席させるかどうかなど、親子関係への配慮は必要。
 
 
・GaPbcde
 G=gravid P=para (pregnancyやとずっと勘違いしてた)
 a:妊娠回数
 b:総出産回数 (=c+e)
 c:早期産の回数
 d:流産の回数
 e:生存している子供の数
 
ex.G3P2112
3回妊娠→1回は流産、2回出産のうち1回は早期産で、2人とも存命中

第二週金曜(4月12日)

今日も実習が休みなので、代わりに僕が暮らす街「オクラホマ州タルサ」の紹介をします。
行く前は全く聞いたことが無く、終わってるほどド田舎なのかなと絶望していましたが、今ではとてもいい街だと思っています。車が無いと生活がほぼ不可能なことを除いては。
観光で来る場所ではないと思いますが、とても見どころの多い街です。万が一、機会があれば是非。
また、大学の交換ブログラムでオクラホマへの留学を考えている後輩たちにも、留学への励みにして頂ければ幸いです。
 
・Tulsaの発展

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オクラホマ州タルサは、元々はアメリカ合衆国各地からインディアン準州/オクラホマ準州強制移住させられたインディアン達が中心になって作られた、小さな町だった。
しかし1900年代初頭、油田が発見されるとその様相は激変し、石油産業を中心に町は飛躍的に発展を遂げ「世界の石油首都」と呼ばれるまでになった。タルサ産の石油は2つの世界大戦において、アメリカ合衆国の強力な基盤となった。当時のタルサ空港は、ニューヨークを抜き世界で最も発着本数が多い空港だと言われ、またシカゴからタルサを経てサンタモニカに至る国道66号線は、アメリカの大動脈となった。
現在でも石油産業や化学産業が市の産業の中心を占め、石油により財を成した実業家の寄付による美術館などの施設が数多く散見される。
 
・Downtown

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タルサのダウンタウンには、石油産業が絶頂となり富が流入した1930年代頃に建築された、アール・デコ様式のオフィスビルや教会が連なる。
あくまでオフィスビルなので中に入るのに少し緊張するが、内部はいずれも様々に装飾を凝らされており、圧巻で歩いて見て回るだけでとても楽しい。
 
・Arts District
 

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元々は黒人の居住地であったレンガ造りの建物群が、近年になって再開発された一帯。
大小さまざまの美術館や展示スペース、カフェや雑貨屋さんや本屋さん、野外コンサート会場など、あらゆるおしゃれなものが集結していて、とても雰囲気がいい。
Ahhaという現代美術館が特にヤバく、今まで生きてきた中で最も頭がおかしくなりそうな空間に遭遇して本能的に恐怖したのはいい思い出。
毎月最初の金曜(First Friday)には、Arts Crawlというイベントが催され、ステージやストリートでの様々なパフォーマンスの他、多くの美術館が無料になり、出店なども出店されとても賑やかになる。最後には花火も上がる。
 
・Philbrook Museum of Art

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タルサの誇る素晴らしい美術館の一つ。
石油産業を中心に、銀行業などで富を得た実業家のウェイト・フィリップスの邸宅が、タルサ市に寄付され美術館となったものである。
古代彫刻から現代アート、またネイティブアメリカンの作品など多岐にわたるコレクションが充実しているが、庭園の美しさも特筆すべきである。
宮廷のような佇まいは一個人の邸宅とはとても思えず、オイルマネーの凄まじさを実感させる。
 
・Gilcrease Museum

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タルサの誇るもう一つの大美術館。
石油事業家のThomas Gilcreaseがヨーロッパ中から集めたコレクションや、その収集の過程で彼が興味をもつようになったネイティブアメリカンの作品を数多く収蔵する。
僕が行ったときにはピュリッツァー賞に関する特別展示が開かれており、1940年代から今までの受賞写真が展示されておりとても面白かった。
 
・Gathering Place

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アーカンソー川沿いに昨年夏に造られたばかりの巨大公園で、現在も一部建設が進んでいる。
ただの公園ではなく、いくつもの巨大遊具や遊園地、美術館、カフェ、コンサート会場、なんと砂浜まであり、大人から子供までみんなが愛する憩いの場である。
2018年の"USA today Best New Attraction"に選ばれたことは、タルサ市民の自慢である。
Uberで乗せてもらったおばちゃん曰く、総工費は40億円とか・・・恐るべしオイルマネー
 
・Woolarloc Museum & Wildlife Preserve

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タルサから1時間ほどドライブしたところにある。
先述のウェイト・フィリップスの兄であり、ガソリンスタンドで有名な大企業フィリップス66の創業者でもある石油王フランク・フィリップの元個人庭園である。
バカでかい敷地にバッファローをはじめとする数多くの野生動物が生息し、ライフル射撃や斧投げといった体験、全部周ると疲れるほどの巨大な博物館などを楽しめる。
バッファローが道を横断していて車が渋滞する」という光景を人生で初めて見た。
 
・Tulsa Historical Society & Museum

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ぼくの一番のお気に入り。
こぢんまりとした博物館だが、タルサという町の歴史をわかりやすく学ぶことができる。
「1857年の人口は264人だった」から始まるタルサ発展の歴史展示では、石油産業を中心とした明るい側面もあれば、Tulsa Race Riotなど暗い側面もあり、そのすべてが今のタルサにつながっているのだと実感できる。
タルサに関する様々な書籍が収められた図書館も興味深い。
また近隣には小さなガーデニングハウスや庭園、Woodward Parkという雰囲気の良い公園もある。

第二週木曜(4月11日)

・4年生の生活
他の医大ではその限りではないが、OUでは1ヵ月の小児科の実習がある以外はすべて自由である。
OU関連の施設だけではなく、自分でapplyした他の施設での実習も可能。
また10週間の休みがあり、STEP2の勉強に当てる人もいれば、旅行をする人もいる。
 
・protonix
パントプラゾール。日本未承認のPPI
ネキシウム(エソメプラゾール)程は認知症リスクは高くなさそう。
 
・Project ECHO
健康格差を是正することと、医者の生涯教育をめざすプログラム。
ECHO: Extension for Community Health Outcomes を目的とする。
HIV/HCV/慢性疼痛/内分泌疾患/行動障害など複雑な病態に対応するプライマリケア医に対して、適切な情報共有を行う。
全米規模なのかどうかはわからないが、少なくともオクラホマ州だけのものではないようだ。
オクラホマ州ではオクラホマ大学ではなくオクラホマ州立大学が中心となって運営している模様。
 
・TeleECHO clinic
Project ECHOの目玉で、6ヵ月くらい前から始まったばかりのシステム?
アメリカは広く、また各地にspecialistが充足しているわけではないので、特定の病気に関して各診療所のプライマリケア医と専門医、薬剤師のビデオカンファレンスをweb経由で行い診療のクオリティを担保する(="virtual clinic")と同時に、医者の教育も兼ねる。
TeleECHOは、psychiatry/HIV/HCV/薬物中毒などに対して行われている模様。
 
C型肝炎の場合は、まず患者に関する情報収集を行う(Hepatitis C pre-treatmebt Questionarrie)。
含まれるのは、飲酒/喫煙/ドラッグ歴、治療歴、既往/併存症、PHQ-9のスコア、検査値(血算、AST/ALT、アルブミンビリルビン、eGFR、INR、HAV/HBV/HCV/HIVの各種抗体価 など)、肝硬変に関する種々のスコア(Meld/Child-pugh/fibroscanなど)、その他検査(腹部CT/エコー、上部内視鏡、生検など)
 
ビデオカンファレンスでは、この情報がフォームに記入されて共有された状態で行われる。
 
一回のカンファレンスで複数の患者さんが扱われる。
複数の診療所が参加しており、順番にプレゼンしていく形式。
 
・鼓膜穿孔
AOM(Acute Oitis Media: 急性中耳炎)に伴い生じうる。
感染によるというよりは、滲出物が貯留し中耳圧が上昇するため。
 
・鎌状赤血球症による血尿
無痛性の血尿は鎌状赤血球症のcommon symptomである。
 
・colposcopy

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こんな感じのディスポーザブルの器具が診察室に大量においてあり、下から光源を差し込んで使用する。
クスコのようにして膣を開き観察、病変だと思われる方向(4 o'clockなど)をpunchしたあと、子宮頚管掻爬(ECC: Endocevical curettage)を行う。
 
・Monsel's Solution Ferric Subsulfate

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硫酸第二鉄溶液=モンセル液。
皮膚生検後に利用する止血剤で、コルポスコピーにおいても利用していた。
医者が「マスタードみたいな」と説明していたのが面白かった。
一部のモンセル液は製造環境に衛生上の問題があるため、2018年以降使用しないようFDAが推奨しているらしい。
 
・米国のCOPD事情
アメリカでは、呼吸機能検査を行わず、「タバコを吸っている」+「胸部単純レントゲン」だけで診断されてしまうことが多く、誤診も多い。
 
・MyFitnessPal
アプリ。医者が肥満の患者さんにおすすめしていた。
1日の接種栄養を微量元素も含めて管理することができる。
 
・TIPS
Transjugular Intrahepatic Portosystemic Shunt: 経経静脈的肝内門脈体循環短絡術
日本では保険未承認。
肝硬変などの肝移植待機中に、門脈圧亢進を緩和する目的で行われる。

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・EDUCARE
おそらくはタルサの事前事業家により設立された、低収入世帯の子供に対する教育/支援プログラムであろう。
保険のようなものかと思ったが、小学校なども所有している模様。
加入前に子供に対する簡単なスクリーニングがある。
Bedlamにしても、タルサは相当医療的には恵まれているのではないだろうか。恐るべしオイルマネー

第二週水曜(4月10日)

・米国のTB事情
米国は結核がまれであるため、BCGは実施されていない。医学生にあっても同様である。
医学生に対しては検診として2年に一回のツベルクリン検査が行われる。
 
・sports medicineレクチャー
今日は午前ぶち抜きでsports medicineのドクターによる整形診察手技のレクチャーがあった。
学生は6人+留学生2人。
パワポは無く、口頭で説明したり、実際に学生を一人患者役にして診察手技を1つずつ確認していく。
それが終わったらペアで手技の練習をしあう。
おそらく、OSCEへの準備を兼ねているのだと思われる。
 
アメリカのOSCE
今度実際に見学させて頂く機会があるが、アメリカのOSCEでは鑑別診断を上げて終わりではなく、診断を確定させるまでのオーダーも含まれている様子だった。
また、Lachmanテストなど異常が再現不可能なものを除いて、身体所見でも可能な限り模擬患者が再現してくれるらしい。
 
・Choosing Wisely
今日レクチャーでちらっと指導医がChoosing Wiselyについて、「知ってる?」と学生に聞いていたが、あんまり学生のリアクションが良くなかった印象。
確かめ損ねたが、アメリカであってもCWはそこまで学生に浸透していないのだろうか。
 
・悪夢とプラゾシン
プラゾシンはαブロッカーであり、通常は高血圧や前立腺肥大の治療に用いられるが、低用量で使用すればPTSDや悪夢に効果があるというエビデンスがある。
 
・ヒヨスチアミン
アトロピンのL体であり、ラセミ体として存在している。
容易にアトロピンに変化するらしく、抗コリン作用により鎮痙などに用いられるが…
アトロピンとの使い分けがいまいちわからない。
 
・エチルクロライド(クロロエタン)スプレー
関節内注射など、注射針一本で行える簡単な手技の際に、局所麻酔の代わりに用いられる。
実際に試させてもらったが、スプレーはとても冷たく、噴射された部分は一時的に感覚が鈍磨する。
注射針を刺す直前に、別の人が横からすっとスプレーする、という使い方が一般的な様子。
 
・Pre-Adoption Medical Assessment
養子縁組に先立ち、養子になる子供と親に対して医者の診察が入る。
子どもの発達について確認することは勿論、親にも子供を育てる上で障害となるような精神的/身体的問題がないかを確認するのが主な目的のようである。
日本では同様の制度はあるのだろうか。
 
・妊婦検診
4週ごとに検診を行う。
確認することは性器出血などの問診に加え、子宮の大きさや児頭の位置、エコーによる胎児心拍数の確認。
異常が見られた場合はすぐにmaternal-fetal medicineに紹介。 
 
・メディケアについて
今日カルテ上で、65歳以上だが保険の欄がメディケアではなく民間保険になっている人をみかけた。
てっきり日本の後期高齢者制度のように全ての人が一律加入するのかと思っていたのだが、そうではなく選べるのだろうか。
またその場合、保険料を払うのが厳しくなってきた際にメディケアに乗り換える、などは可能なのだろうか。
詳しい人教えてください。