あるねぶのFamily Medicine留学メモ

留学で見たものをまとめました。ただのメモなので、読みにくく申し訳ありません。

第三週水曜(4月17日)

・医局と診察室の配置
今日は昼にスタッフ全員によるミーテイングの時間があり医局に誰もいなくなったので、その間に診療所内をひっそり探検した。
医局はRED BUD/BLUE SKY/GREEN COUNTRYの3つのブースに分かれている。
数えてみたら、診察室はGREENに16室、REDとBLUEの間にはパーテーションが無く合わせて27室、共用の処置室が6室あった。
待合から中に入るとこのような視界で、ナースに何れかの診察室に案内される。
右に見えているのが医局スペースでこの前を通ることになる。

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また待合の外のスペースに、子供のワクチン接種用の部屋と、SOONER CARE(オクラホマで比較的よく見かける保険。オクラホマ州=Sooner Stateなので)に関する相談室が備え付けられている。
 
・医局の机の配置
医局の机配置はレジデントより上の常勤スタッフ以外は定まっていない様子。
電子カルテが長机に並べて置いてありパーテーションはなく、基本医者は1つ電子カルテ端末を間に空けて座る。
これは、この空いている電子カルテ端末のところに、医学生が座り担当の指導医からの直接の指導を受けるためである。

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・米国の高血圧診療
1stはACE阻害(リシノプリル)かサイアザイド(クロルタリドン/日本では使用不可)であり、その利用は半々くらい。
心不全など心機能に問題がある場合はリシノプリルが優先される。
2ndはCaブロッカー(アムロジピン)。
3rdはβブロッカー(メトプロロール、カルベジロール)
これらでもうまくいかない場合は腎臓内科医や内分泌医による精査も考慮し、クロニジン(α2アゴニスト)も試される。
 
アムロジピンによる足背浮腫
Ca拮抗薬は末梢血管拡張作用と心収縮抑制作用を持つが、特に前者の末梢血管拡張に伴う足背浮腫が起こるリスクがあり、患者が心不全と思って病院を受診することがある。事前にそのようなことが起こりうることを伝えておくことが大事。
 
・financeに関するレクチャー
用語が難しくて10%も理解できなかったが、医学生に対し、医者の収入や資産運用、税制、株などに対するレクチャーが行われていた。
Dow Jones、Gross/Net pay、Pre/Post-Taxなどの単語が飛び交っていた。
医学生もいつもの疾患別のレクチャー以上に興味をもって聞き、たくさん質問していた。
聞いたところによると、OU-TUでは家庭医療のローテーションで回ってきた全ての3年生とPAにfinanceのレクチャーをしている。
このような話題を医学生およびレジデントの教育プログラムの中で扱うことは、米国では一般的なようだ。
 
・『Fracture Management for Primary Care』
プライマリケア領域で必要とされる骨折のマネジメントやレントゲン読影、専門医への紹介のタイミングなどについてまとめた良書。
骨折苦手なので、日本語訳が欲しい。頑張って原著読むか…
 
・Hillcrest Grand Round
週一回水曜日に、隣接するHillcrest Hospitalの講義室で1時間開催されている。
ラウンドという名前だが回診ではない。
様々なテーマに関するランチョンセミナーのような形だが、製薬会社からの資金ではなく病院の資金で開催されている。
ご飯はまさかのバイキング形式でおいしい。
対象は医学生~レジデントや上級医、ナースも参加可能。
今月のテーマは「Primary Care Approach to CKD」「Anticoagulation」「Rectal Cancer Treatment」(1回中止になった)
なお、アメリカにおいても製薬会社の絡む広告込みの勉強会は行われているらしいが、Family Medicine Centerでは製薬会社が絡む勉強会の開催を一切禁じている。

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アメリカの予防医学とACEs
今日の友人との会話による。
彼は「アメリカの医療システムは病気の人に対しては(だから海外からもわざわざ受診のためにやってくる人がいる)優れているが、健康な人に対してはイマイチ」と言っていた。即ち、アメリカにあっても健康な時に受診し新たな疾患の発生を防ぐという予防医学の概念は、特に高齢の患者であるほど、未だ浸透していない。
また彼は特に精神科疾患の診療に関して疑問を抱いている様子であった。というのも、精神疾患が起きてERか家庭医を受診した後でないと精神科に係れないという仕組みが理不尽だと感じているらしい。仮に両親とも統合失調症で兄弟も統合失調症だ、という人がいたとしても、発症しERか家庭医がfirst touchした後でないと精神科医は関与できないのである。
またACE(adverse childhood experience)の話もこれに関して盛り上がった。
日本語では「小児逆行体験」と訳されており、多くの健康問題に関わるとされ近年米国では研究が盛んである。
まだ実臨床でこの概念が十分応用されるまでは至っていないが、今後の進展に期待。
 
・家庭医療の競争率
各専門科の人数が制限されており、USMLEの点数で診療科の選択が左右されるのがアメリカの専門医制度だが、家庭医療科の競争率はかなり低いらしい(倍率が一番低いこともあるという)
 
・患者の引っ越し
新しい地域にうつる場合は、患者が新たなPCP(Primary Care Physician)を選ぶ。
前のPCPが次のPCPを指定することはできない。
最後の診察の時に患者に対して診療情報提供書的なものを渡す感じ。
 
片頭痛の薬剤に関するあれこれ
<ピル>
ピルは片頭痛を増悪させるため、片頭痛の患者の避妊法では経口ピルではなく経皮デバイス等別の手段が推奨される。
<トピラマート>
知らなかったのだが、トピラマートは片頭痛発作を抑える効果があるらしい。
ただ前兆の発生を抑えるだけで発作の発生頻度は変わらないという話も?
<Treximet (スマトリプタン・ナプロキセンNa)>
併用すると片頭痛への効力が高まるとされるため発売されている合剤だが、なぜか異常に薬価が高い(9錠で2万ドル以上)。
別々に処方して同時に飲んでもらった方がよっぽど安い。合計20ドルもしない。
 
・合剤の高価販売
Treximetの件が気になって調べてみたところ、安価な2つの薬を合剤にして「新たな」薬として高価に販売する、という手法がよくあるみたい。代表的なものとして、Duexix(イブプロフェン/ファモチジン)、Treximet、Acanya(クリンダマイシン/過酸化ベンゾイル軟膏)、Ziana(クリンダマイシン/トレチノイン軟膏)、Qsymia(フェンテルミン/トピラマート) など。
調べたところによると、避妊薬、減量薬、痛み止め、抗菌薬 などに特にこういったケースが多いようである。
 
・Oklahoma PMP aware
PMP: precription monitoring program
コデインなど処方に制限のある薬が、それぞれの患者に誰がどれだけ処方したかを一元的に記録しているツールである。
オクラホマ州内の患者であれば、他院/他州で処方されたものも併せて参照することができる。
モルヒネ換算でどれだけ処方されているかが時系列で表示される。
 
・lead screaning
米国では、住環境の問題で400万人以上の子供が鉛に暴露されているとされ、小児期の血中濃度スクリーニングが推奨されている。
ただその見解がガイドラインによりバラバラ。
小児科学会: 1歳時と2歳時
家庭医療学会: 2歳時
予防医学学会 1歳時と2歳時に患者からの要求があれば