あるねぶのFamily Medicine留学メモ

留学で見たものをまとめました。ただのメモなので、読みにくく申し訳ありません。

第四週月曜(4月22日)

<Hillcrest Medical Center>

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・Family Medicine病棟実習の流れ
6:30頃に集合して、5人くらいで7:30頃まで病棟の夜勤医からの引継ぎ
8時過ぎまで朝ご飯、そのあと1時間半くらい各レジデントで回診
10時ごろにチームで再集合してカンファ(レジデントの教育の場を兼ねて指導医からの質問や、ポートフォリオ的な診療へのフィードバックを交え進む)
カンファ室には人数分電子カルテがあり、UpToDateにもアクセス可能。大きなモニターにUpToDateを映せるので、教育にも使われる。
 
・カルテの記載方式
SOAP的な感じだと思うんだけど、IPASが何の略かわからなかった。他にもわからない略語がたくさんあり、今日出てきたものを末尾に纏める。
I: stable
P: たぶん現病歴
A: フォローアップについて書かれる
S: コンサルトや、指示など。
Rm/Bd、LOS: 2 attending
 
・Family Medicineの担当病棟
OUFM impatientとOUFM OBに分かれており、前者8人と後者5人(いずれも39-40週で正期産の子供か妊婦)。
Hillcrest Hospitalの本館から、Heart InstituteやWomen Health Centerにまで患者さんが散らばっているため回診が大変。
スタッフは上級医2人とレジデント2人で、一番上の上級医は患者を持たず、残り3人で患者を担当。おそらく主治医制。
レジデントは15日毎に交代、上級医は日によって病院にいたり外来にいたりで、行ったり来たりしている模様。
 
・病院家庭医の守備領域
心不全などでも特に病態がややこしくなっている人、妊娠/出産で比較的正常な人、などいろいろ。
今日診た人だと、心不全急性増悪、火傷、CNSのリンパ腫、AKI、骨髄炎、正常分娩など。
先週実習してた同級生によると、割礼も家庭医がやっちゃうらしい。
 
・病室の特徴
病室の広さは日本の1.5-2倍くらいで、基本個室。総室があっても1室2人程度がMaxらしい。
病室のドアは開けっ放しのことが多い。
ナースステーションもかなりオープンで、普通に患者さんが中を通れてしまいそうだった。
各病室の前にアル綿が備え付けられており、聴診器の消毒をする。
病室に1人ずつ大きなホワイトボードがあり、ここに患者情報や医療スタッフへの質問欄、痛みのフェイススケール、患者の母国語"Today's goal"  転倒リスクなどを記入する欄がある。転倒リスクがHighの場合、病室の前に流れ星が貼られる。
患者さんの休憩室に普通にコカ・コーラの自販機があるのはどうかと思うが。

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・スタッフ同士の相互評価
お昼時にスタッフ同士(レジデントだけでなく上級医含む)がお互いの診療態度などを評価しあうミーティングがあった。といっても批判的なものではなく、建設的な意見が多かった印象。
チームワークを高めるために定期的に行われているが、家庭医療プログラムに普遍的なものというよりは、OUのプログラムに特徴的なものらしい。
 
・Language Line Hospital
母国語がスペイン語の患者さんを診察する際、医者がスペイン語を喋れない場合はコチラを利用する。
病院内に翻訳者が待機しており、自分のスマホで電話をかけハンズフリーにして通訳が可能である。
 
・新生児とビリルビン
健康な新生児では、およそ 40%は生後24時間の時点で総ビリルビンが 5mg/dL、36時間までに7mg/dL になる。

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・新生児のルーチン診察
まずは胸部と腹部の聴診: 泣かないうちに
頭蓋: 大泉門
目: ペンライトだと反射がまぶしすぎるので、眼底鏡で代用するといいらしい
耳: 奇形や位置異常がないか
口: 小指を入れ、吸啜反射、硬口蓋の確認
鎖骨: 分娩時の骨折の頻度が最も高いため確認
上肢: 指の数、把握反射、腕だけ上に引き上げてモロー反射
腹部: 腫瘤が触れないか
鼡径部: ヘルニア
生殖器: 男児は頑張って精巣の触診、女児は視診
肛門: 鎖肛の確認、蒙古斑
股関節: 大腿骨の両端を掌でしっかり押さえて児に向かって押し、クリック音の有無を確認(先天性股関節脱臼)。その後片側ずつ可動域確認
背部: 脊柱を上から順に触診
その他反射: Babinski、歩行反射、開眼しているなら前庭眼反射
 
てんかん重積とレベチラセタム
アメリカではてんかん重積の第一選択はロラゼパムのようだが、最近レベチラセタムの方がいいんじゃないかってなってるらしい。
 
・OBに関する略語
24hrTCB (HRZ): Transcutaneous Billirubin 
24h/36h TSB (HRZ): Total Serum Billirubin
Rh+/rubella immune GBS
ROM: intact: Rupture of Membrane
Anes: epidural: anesthesia
BC: nexplanon: Birth Control
HRZ/HIRZ/LIRZ/LRZ High/Low (Immediate) Zone
 
・そのほか略称
(カルテ上で怒涛のように出てきた略語をすべて記載、わからなかったものは太字にしているのでもしわかる方いらっしゃれば教えてください)
RHC: Right Heart Catheter
NPO: nil per os (nothing by mouth)
CM:   (CM states that pt needs to get FMLA paperwork fom his job and then bring it to hi PCP for completion)
FMLA paperwork: Family and Medical Leave Act
CXR: Chest Xray
IVF: in vitro fertilization
BSA: Body Surface Area
PRN: pro re nata (as needed)
PO -UOP: Urinary Output
s/p: status post (≒after)
per ID: (Vanc/Zosyn started 4/8×6 weeks, per ID)
AKA: abobe the knee amputation
EGD: esophagogastroduodenoscopy
LTAC: Long-term Acute Care
MPOA: Clarissa(Sister, MPOA)
LE u/s lower extremity ultrasound
w/: with
IDDM: Insulin Dependent DM
p/w: presents with
1L NS in ED, ordered mlVF
CMP: Comprehensive Metabolic Panel (Blood Test)
MDRO: Multi Drug Resistant Organisms
UA-: (Abdominal UA- pt is asymptomatic)
Abx: Antibiotics
HCAP: Health Care Associated Pneumonia
Gtube: Gastrostomy Tube
Jtube: Jejunostomy feeding tube
 
<Tandy YMCA>

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・Tandy YMCAの設備
アメリカではYMCAが健康増進に貢献する目的でスポーツジムのような設備を運営していることが多いようで、タルサでも立派なスポーツジムがある。(Tandyは例にもれず石油系実業家の名前)
一階にはプールなどがあり、二階にはジムやボルダリングに加え、Sports Medicineのクリニックがある。
ドクター曰く、Sports Medicineで急性期の筋骨格系の問題を診察/管理し、そのまま同クリニック内やジム/プールでphysical therapyを行い、そこから自主的なジム利用などによる健康維持/増進につなげていくという設計思想のようだ。
 
・Tandy YMCA Sports Clinicの設備
診察室は6つあり、各診察室に電子カルテの端末が無い以外は、Family Medicine Centerと大きくは変わらない。
特徴的なのは巨大なPhysical Therapyのためのスペースと、トレッドミルを用いた各種精密試験が行えるHuman Perforance Laboratoryである。
Human Performance Laboratoryでは、歩行の問題を様々な方向から撮影・分析したり、運動処方の強度を決めるために使われたり、嫌気性代謝閾値を調べたり、心電図を装着してストレステストに用いたり、アスリートの訓練に活用されたり、さまざまな用途がある。
この検査自体は保険でカバーされるわけではないが、それを医者が監督する、相談する、という行為に対しては保険が効くことがあるらしい(アメリカの保険の仕組み全般の話として、おそらく検査itselfに個別に適応が決まっているわけではないんだよ、という主旨だったと思われる)。

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・Tandy YMCA Sports Clinicの患者層
Family Mecine Center 2階のSports Clinicと、あまりかわらない。
ただ、Family Medicine Centerの方では疼痛管理がメインの患者が多いのに対して、こちらはよりスポーツ医学/整形内科的手技の割合が高いようだ。
 
アメリカの専門医制度とSports Medicine
レジデンシーとしては存在せず、フェローシップで選択することになる。
8-9割が家庭医療レジデント出身だが、内科/小児科/ERからも選択可能。
全米に200ほどフェローシップがあり、学会は4000人くらい。
 
・Physical Therapyの処方
Sports Medicineは「筋骨格疾患をnon-surgeryで治す仕事」である。
90%はphysical therapyで治るとされ、非常に重要な立ち位置を占める治療法である。
医師がPhysical Therapyを処方する場合、決めるのは大体の頻度や強度など、おおまかなところだけである。
具体的な内容を決定するのは療法士であり、仮に同じ処方であってもセラピストが違えば違う内容になりうる
ただ、医師が「プールセラピーにして下さい」みたいな形で具体的に提案することも可能。
 
・Physical Therapyと保険
通常、多くの保険ではPhysical Therapyのカバーがあり、かつそれはどこで行っても構わない。
しかしMedicare/Medicaid/Soonercare(オクラホマ州の公的保険)では、病院(St.John/Saint Francis/Hillcrest)で行われるものしか対象にならず、Tandy YMCAのような民間施設で行われるものは対象外となる。
これは、大病院は病院内で完結するシステムを持っており、コストコトロールが容易で比較的コストを低く抑えられるからだといわれている。
また、一般的に同じPhysical Therapyであっても、民間施設で行われるものの方が質が高いとされる。
 
・医師のレビュー
Googleで医師の名前を検索すると、口コミと☆5段階のレビューが表示される
「同じ治療であれば、どこで誰がやってもその結果は同じだ」という暗黙の了解の元に成り立つ日本の医療制度の上ではまずあり得ないことで、地味ながら感動した。
 
・関節内注射ステロイドの使い分け
関節内注射では、だいたいトリアムシノロンとリドカインを混ぜて注射している。
トリアムシノロンを使うことがほとんどだが、トリアムシノロンは使う前に結晶と溶媒を混和して使う薬剤のため、小関節では(血症が析出しやすい可能性があるため?)あまり好まれない。
手などの注射では、代わりにセレストン(ベタメタゾン)が用いられる。
 
・bursa injection
滑液包に注射するもの。
薬剤は、関節注射で用いるトリアムシノロンとリドカインに加え、より作用時間が長いブピバカインを混ぜる。
これは、ブピバカインは軟骨障害作用を持ち関節注射には使えないためである。
 
・carpal tunnel night splint
手根管症候群で装着するサポーターのこと。
手首の過伸展/過屈曲を防止する。
 
・関節内注射の位置
膝の外側から、膝蓋骨・膝蓋腱・大腿骨・脛骨という硬い組織に囲まれた、触って柔らかい部分を注射する。

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