あるねぶのFamily Medicine留学メモ

留学で見たものをまとめました。ただのメモなので、読みにくく申し訳ありません。

第一週水曜(4月3日)

電子カルテの端末
十分な数が備え付けられているが、アカウントさえあれば自前の端末でもアクセスできる模様。
このため、学生が自分のラップトップ1つだけを診察室にもっていって予診する、ということが可能である。
また、カードをピッとすることでログインできるシステムになっているが、どこかの端末で開いた状態で別の端末で開くと、先に開いていた方は自動的にログオフされる仕組みになっている。
 
アメリカの医大と経済事情
アメリカのmedical schoolにも公立と私立がある(オクラホマは公立)が、学費はあまり変わらず1年で300万円程である。
また入試の倍率も大変高く、経済的な理由と併せて、日本と同様医者の子供が医者になることも多い。
 
アメリカの医大と人種
30年?ほど前は人種間較差の是正のために、白人○○人、黒人△△人、という形で入学人数を定めていたが、やはり不公平だという意見が多く現在は行われていない。
現在は少数のバックグラウンドをもつ人に対する奨学金などを設けることで、より穏便に是正を働きかけるのが一般的だということである。
 
・竜巻の避難訓練
何も知らなかったのでいきなりサイレンが鳴ってビビった。
窓が無い、比較的建物の中心部にある診察室が"severe wheather shelter"であり、そこに職員が移動する。
アメリカ中部には竜巻が多く(特に5月)、この辺りの病院にはかならずこういった避難訓練やシェルターがある。
とある先生は、「5年いるけど、近くで台風が出て避難になったことは一度もない」といっていた。
ただ、竜巻を経験したり見たりすること自体はかなり一般的な模様。
 
C型肝炎の扱い
ウイルス性肝炎の中でも特に、C型肝炎は治療が高価だが可能になってきた関係で、薬剤歴や性交渉歴、抗体価など十分な情報を集めた上で、診断に際し全例でビデオカンファレンスが行われる。
参加者はFamily physician、感染症専門医、臨床薬剤師で、そこでの内容がまとめられ患者にも提供される。
 
・ACE(Adverse Childhood Experience) score
1995-7に米国で行われたstudyにて、ACE(小児期のトラウマ)が生涯の健康/社会問題に関連することが示された。
10問の質問で構成されるACEスコアが高いほど、成人後のアルコール依存やうつ、自殺、COPD、肝炎など様々なリスクが高まり、一方で仕事の能率は低下する。
 
・杖
これはポーランド/ハンガリーを旅行した時にも感じたことだが、日本のようなT字杖はほとんど見られず、ロフストランドクラッチの頻度が高い印象。なぜだろう。
今日見た患者さんではOAに対して片側で使用していた。
 
・オーグメンチン875/125mg
こんなニッチなところで感動してしまった。
日本で承認されてるのはオーグメンチン250/125。足りないので、サワシリン250を2錠合わせて750/125にしている(オグサワ)
 
・学生/レジデントと手技
今日は2つの手技があった。
手技をやっていたのは1年目レジデントや学生。
学生は見学になっても、患者さんへの声掛けを担当しており、素晴らしいと思った。
今日見学した手技のうち、巻爪の剥離はレジデントが、トリガーポイント注射は学生が行っていた。
 
・レジデントについて
必要であれば上級医に相談するが、基本は自己判断のみで診療してよいようだ。
1週間に2度、様々なジャンルに及ぶquizがある。
家庭医療だけではなく、スポーツ医療や皮膚科などもローテーションでき、より多く外科手技などを経験することができる。
研修期間中に研究・発表も行うことになっている。
実際、指導して頂いている3年目レジデントも、後述するResearch Forumで発表していた。
ポートフォリオはどのようになっているのだろうか?ぜひ聞いてみたい。
 
・小児予防接種
接種前の診察とオーダーまでが医者の仕事で、予防接種はナースが実施しててしまう。
(ドイツでは日本と同様、医者が予防接種をするらしい。)
小児の必要な予防接種は米国であっても無料で受けられるが、日本と同様ワクチンが自閉症の原因になる等と信じて予防接種を行わない親も増えてきており、麻疹が再興してきている。
 
・Birth Control
米国ではIntraUterine contraceptive Device(子宮内避妊具/IUD)の使用頻度が比較的高く、避妊法の5.5%を占める。
バイスは子宮内に高エコーで観察される。指導医は名札に小さいデバイスの模型をつけていて、すぐに見せられるようにしていた。
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・入れ墨
入れ墨を入れている人がかなり多い。体感では過半数を超えている。
MRIの時にはどうするのだろうか?
 
・禁煙指導
オクラホマにはTSETとQUIT NOW(?)という2つの禁煙プログラムがある。
TSET: 12週であり、ニコチンのパーシャルアゴニストであるchantix(バレニクリン)を用いるため、やや高価。開始1週経過後から禁煙する。
QUIT-NOW: 8週で、薬を使わない。無料。
喫煙の診療に関しては、やはりブリンクマン指数ではなくパックイヤーで会話していた。
 
・まさかの腹痛の原因
Flamin's Hot Cheetosという激辛スナックの食べ過ぎで胃炎になる人が割といるらしい。笑
今日は実習が早く終わり、サイクリングをしていたところ発見したため試してみたが、終わってるくらい赤い色をしていて激辛すぎた。とても全部は食べられなかったので捨てた。

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・flu診療
無意味な迅速検査や抗ウイルス薬投与は避けられているようで、好印象だった。
子供のウイルス性と考えられる咳に対し、薬を出すのではなくハチミツを温めた飲み物に加えて服用することを勧めていた。
あまり詳しく聞けたわけではないので、次の機会に期待する。
 
・Research Forum
年一回、OU-tulsaで開催されている。
オクラホマ大学だけではなく、タルサ大学などの近隣の大学の研究者/レジデントが集い、軽食を食べながらポスター発表や交流をする。
公衆衛生的な内容が比較的多いものの、基礎医学、工学、数学、物理学など多種多様な発表があり、見ていて面白かった。
また、LGBTに関する研究も多かった印象がある。オクラホマLGBTとの間にはどのようなかかわりがあるのだろうか?
実は今日、帰りのUberの運転手にいきなり俺はバイだとカミングアウトされ、かなり誘われて恐怖したのだが、それも相まって詳しく知りたくなった。

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(おまけ)
ステイ先の周辺をサイクリングし、オクラホマ屈指の大病院であるSaint Francis Hospital(約1100床)を探検してきた。
ホテルかと見まがうほどの美しい受付/売店や教会、圧倒的な広さの敷地に驚いた。
こども病院が付属しており、その横にはこどもが病気やけがで入院した際、遠方からの通院が大変な家族に衣食住を提供するという「RONALD McDONALD HOUSE」があった。ハンバーガーでおなじみのあのマクドナルドがチャリティーで展開しているものである。
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