あるねぶのFamily Medicine留学メモ

留学で見たものをまとめました。ただのメモなので、読みにくく申し訳ありません。

第一週火曜(4月2日)

アメリカ社会とcannabis(大麻/マリファナ)
オクラホマでは昨年大麻が医療利用に限り合法になり、新規マーケットであるため「green doctor」「take care yourself」などの名前で多くの企業の看板を見ることができる。
アメリカでは乱用の相次ぐopiatesの代用としても大麻が有用であると考えられており、主にターミナルケア領域を中心として半数以上の州で認められつつある。
一部の州ではrecreationalも含めて合法で、処方箋なく購入することができる。
 
・家庭医と患者の距離の取り方
指導して頂いている先生のように、動くモニターを駆使して患者となるべく正対する医師がいる一方で、それでもモニターにばかり向かいきりになり「患者を見てくれない」といわれる医者はアメリカにもいるらしい。
 
 
・抗菌薬乱用
アメリカにおいても、根拠のない抗菌薬投与は行われている模様。
日本と同様、患者は何かの薬の処方を期待して来院するため、という心理が働いているようだ。
経口第三世代セファロスポリンもそれなりにつかわれている?(僕の訊き方が悪かっただけでセファロスポリン全般かも)
 
・504(five-o-four) accomodationとIEP
どちらも障害を持つ子供に対する教育プログラムに関する用語。
似ているが微妙に違う。
<504>
1973年にできたリハビリ法第504条に依るもの。
障害のある生徒と同じ学校区に、障害のない生徒と同程度の教育を受けられる施設を設置する配慮をするよう義務付けられている。条件は「身体的または精神的な障害がある」「障害により日常生活が相当に障害されている」
学ぶ環境へのアクセスが担保された宿泊設備?(accomodation)を確保するものである。
 
<IEP>
Individualized Educational Plan
対象は504と大きく変らない。そういった子供たちが特別な教育や関連サービスを受けられるよう担保するものである。
 
<違い>
障害を持つすべての子供が特別な教育を必要とするわけではない。
特別な教育を必要としなくても、公共の教育やサービスへのアクセスのための補助が必要な子供はいる。
504 planに乗っている生徒は特別な教育を必要としないものの、その内容が子供其々の求める環境に対しもっとも効果的なacomodationを提供できるよう、毎年更新されるべき。
 
アメリカ社会と妊娠/結婚
アメリカでは大半の州で、双方が18歳以上であれば親の合意なく結婚可能である。
親の合意や司法判断があればそれ以下でも結婚可能な州は多く、33州で下限が定められている。
(14-18歳と様々で、OKは親の書面での同意があれば16歳、それ以下の場合は司法判断)
 
アメリカでは1980年代からセルフメディケーションの概念があり、軽症に対するOTCの利用が盛んである。
アメリカはOTCが多く、医師が処方箋ではなくOTC購入を指示して終わることも多い。(おそらく高額な医療費負担を避ける目的もある)
PPIや抗ヒスタミン薬がOTCで普通に売ってる。
 
・UpToDate
電子カルテのモニターからすぐにそのままUpToDateにアクセスできるようになっていて、そこでさっと調べている。
日本のように様々な教科書類が診察室においてあるということはない。
 
・メディケアとメディケイド
メディケア: 65歳以上、および身体障碍者
メディケイド: 生活困窮者を対象とする
 
アメリカの肥満度
肥満はBMI30以上で定義される。
アメリカの肥満人口は全人口の30%前後。特にnon-hispanicの黒人で肥満率が高い。
肥満人口の割合は中部~東海岸で高く、西海岸で低い傾向にある。
(確かに前入りして観光したサンフランシスコではそこまで肥満の人は目立たなかった印象)
OKは2017年データで肥満度が35%を超えている7州のひとつである。

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(出典: Adult Obesity Prevalence Maps, Centers for Disease Control and Prevention)
 
なお、アメリカでは肥満の有病率が極めて高いため、背中の痛みと脚の痛みはcommon diseaseである。
 
 
・SpectraCell Micronutrient Testing
一企業が行っている人間ドックてきなもんらしい。
おそらく、食事から微量栄養をとれているかスクリーニングする予防医学ビジネスだろう。
あるいは疑似科学的なものか?日本でも自然派ママや反ワクチンが幅を利かせているが、アメリカでもそうなのだろうか。明日以降に詳しく知りたい。
 
 
PCP
Primary Care Physician。Pneumocistis Carinii Pneumoniaではない(そもそも今はCariniiではない)
 
・院内薬局
院内薬局の様子は日本とあまり変わらないが、自動で一包化してくれる機械がなく、薬剤師さんが手動でピルケースに分割しラベルを貼っていた。
尋ねたところ、大病院では自動化されているところもあるとのこと。
日本のように文字通り「一包化」されているのか、自動でもピルケースを使っているのかは不明。
また、大病院では薬局を外部企業が運営しているケースも一般的らしい。
 
・メンター(4年生)
各ローテーションにほぼ必ず上の学年の学生が待機している。(Family medicineはマッチング終了後の4年生が1人)
一緒に実習を行ったり、屋根瓦教育のように上の学年が下の学年を教えるというわけではないが、
1年上の身分として実習に関するあれこれについて相談に乗る、という立ち位置らしい。
 
・多職種教育
Family Medicine Centerは、MDのみならずNP(Nurse Practitioner)やMSWの養成の場でもある。
各職種が分け隔てなく机を並べており、ミックスされて教育/診療が行われている。
医者も白衣を着ていないので、正直一見すると誰がどの職種かわからない。
またOU-Tulsaの本部であるSchusterman centerのシミュレーションセンター(設備については後日)には、患者の自宅が再現された一角があり、主にMSWの研修に利用される。
院内薬局に薬学生が来る場合もある。
 
・Resource Screening
全患者に対し、MSW(の研修生)が記載するシート。
簡単な家庭状況、収入、PHQ-5などが含まれる。
"Do you consider yourself part of a religious a spiritual community?"という質問が独立してかなり初めの方にあるのが興味深かった。
 
・Bedlam clinic
OU-Tulsaの誇る衝撃の教育・診療システム。
実は僕が伺っているFamily Medicine Centerでは、同じ箱を利用して、Family Medicine ClinicとBedlam Clinicの2種のクリニックが時間交代で運営されている。
Bedlamは火曜の午後+夕方以降と、木曜の夕方以降に行われており、学生は時間帯ごとに割り当てられ出席が義務付けられる。この時間帯には、Family medicine以外のローテ中であっても、全ての学生がFamily Medicine Centerに集合する。
 
Bedlamの最大の特徴は、保険がすべての国アメリカにあって、無保険者に対し無料で診療を行っていること と、 学生が診察からオーダー、処方/処置まで全ての意思決定を独力で行っていること にある。
学生が行っていい行為は診療所で可能な全てであり、より高度な検査のための紹介なども可能である。
指導医は在院し問題が生じないようモニターはしているものの、原則は学生にすべて任され、よほどのことが無い限り介入することはない。
 
予算は政府からの補助金と寄付で運営されている。
このようなシステムはオクラホマ大学のオクラホマシティキャンパスには無く、また全米でも珍しい取り組みとのこと。
ある意味では無保険者の弱みに付け込んだ形にも思え、国民皆保険を原則とする日本ではまず行えない仕組みであろう。
 
このシステムがあるため、OU合格後のキャンパス選択の際、OKCではなくタルサを選んだという学生も多いらしい。